「カルテ形式の品質 」正しい書き方

愛知県津島市民病院講演 2003年4月9日 栗本秀彦


カルテという業務日誌

 最初にカルテの意味を掲げます。

表1 カルテの意味
  1 公文書
  2 業務日誌(受託業務)
  3 考えの仕組みと実験の記録
  4 正しい記憶
  5 正しい伝達

 われわれは国家資格をもって仕事していますから、仕事上の記録は公文書と言えます。そして、仕事は患者からの受託業務です。カルテは日々果たしている業務の日誌です。日誌の内容は医師の仕事という特殊なもので、水道の検針、器具の点検、看護婦の検温のように決まりきった単純な手順の事後記録ではなく、個々に異なる患者の疾患診断治療を記録するものです。われわれの臨床行為は、観察し仮説を立て検証し治療実験をする科学行為の一つです。限られた時間でやり直しの利かない実験行為をすることに臨床家の本質があり、研究室での実験行為とここが決定的に違います。臨床家として執り行う観察、仮説、検証、治療実験の計画と結果、と分析という業務行為を日誌には記さなければなりません。口頭とは違って文字として記録することにより、ほとんど永久的に誤謬なく記憶伝達され得ます。
 業務日誌ですから、白紙であれば業務を行わなかったことと同じ意味です。診療の区切り、外来ならば診察日のたびに入院ならば意味ある区切りごとに、記録しなければなりません。診療作業は医師のみならず、配下のパラメデイカルにも患者の内容がよく理解できるように、ニッポン語で書くことが原則です。頻繁に使用している簡便な略語は他国語を使ってもかまいませんが。

形式の品質

 ここからが本題です。

 カルテは医師の仕事の記録です。記録には形式があります。しばしば耳にすることですが、内容がありさへすれば形式はどうでもよい、という考えがあります。これは誤りです。形式があるから、内容が内容となり得る。形式の枝葉を払って溯ると、ものごとの範疇、書く枠ということに突き当たります。どういうことかを乱暴に単純に例示しますが、次の表をご覧下さい。

表2 形式の意義 (1234567890 )
電話1234567890
金額1234567890
ID1234567890


 数字を内容としますと、ただ数字だけでは意味を持ちません。数字が電話、金額などの枠の中に書かれてはじめて意味を持つようになります。姓名と住所の枠を取り違えて書いておいて、分かればいいじゃないか、と言うのはとんでもないことです。姓名に廣島、住所に長崎とあれば、廣島の長崎さんではありません。枠がなくて、ただ廣島、長崎と並べては何がどうだかわかりません。
 書く枠、範疇、つまり形式ははなはだ重要です。それは、形式がとりもなおさず認識の仕方を表しているからです。認識したものごとの構造を表しています。人について、身長、体重、視力・・、と表すことと、学歴、職歴、賞罰・・、と表すこととは、認識の仕方が違います。認識について言うと、認識には高低深浅があります。そこで形式に戻って言えば、形式には良し悪しの段階があって、高く深い認識に対応する形式と低く浅い認識にしか対応しない形式があるということです。言い換えれば形式そのものに品質があるということです。このことは、高品質形式を満たし得る認識、低品質形式で事足りる認識という違いが認識そのものにあることにほかなりません。低品質形式では表しえない認識は高く、高品質形式を満たし得ない認識は低い、とも言い換えられます。

カルテ形式の種類

 カルテにも、形式としての品質があります。こんにち見るカルテ形式は次のように分類できます。

表3 カルテの品質
  1 白紙
  2 雑記帳メモ
  3 混乱SOAP
  4 プロブレム混沌SOAP
  5 プロブレムごとのSOAP(図1)


 カルテ形式に良し悪しの段階があって、1から5へと品質は良くなります。混乱する複雑な医師の仕事を整然と整理できて明確に考えを表せる形式、つまり読み手にとっては筋道がよく分かる形式が優れた品質である、という観点に立ってご覧ください。それぞれの実例をご覧に入れます。

1 白紙;形式ではありませんが、先刻申し上げたように、業務放棄を意味しています。
2 雑記帳メモ;
 このように認識せよ、という要請はなく、何をどう書いてもかまわない形式です。したがって内容が雑然として書かれて話の順番があちこちにばらついているのが通常です。書かれたように頭に考えが想起されているわけですから、誰しも経験するように雑然と入り乱れる考えにはまとまりがなく結論も根拠もあやふやで混乱します。他人が読んでも、考えの焦点展開が不分明です。優れた論文は優れた形式に則っていることからも、このことはお分かりでしょう。
3 混乱SOAP;
 S欄O欄A欄P欄は、あとでご説明するように範疇が違う枠です。明確にその違いを認識していただかないと混乱します。ご覧のように、SにOが書かれていたり、A/Pと範疇の違いに無頓着なことは、あたかも履物を机上に置きラーメンを下駄箱に並べているようなものと申して言い過ぎではありません。廣島と長崎を一緒に書けば姓名と住所の区別がつきません。
4 プロブレム混沌SOAP
 患者には病気があります。それぞれ異なる病気がいくつもあるでしょう。癌と肺炎があるときに、2つの病気をごっちゃ混ぜにしていると、SOAPは範疇正しく書かれていても癌が進行したのか肺炎は良くなったのかは分からずじまいです。胸が痛いと言っても、癌で痛いか肺炎で痛いかが区別されていないからです。
5 プロブレムごとのSOAP(図1)
 これが最良品質のカルテです。病気ごと、つまりプロブレムごとにSOAPが書かれています。それぞれの病気のプロフィールと、そして患者におこなったことを明瞭に区別して示すことができる形式です。読めば、患者の医学的構造が明瞭に分かります。ということは書き手も明瞭にわかって書いています。癌で胸が痛ければ癌のところに、肺炎でならば肺炎のところに書かれています。区別がついています。この形式を満たし得る内容を持っている書き手は、これより品質の悪い形式では書くのに困るでしょう。自分の認識を表現し得ないからです。

診療行為の仕組み

 それでは先へ進みます。良品の形式をお話しします。われわれの診療作業を外面から見ると、患者の問診、過去の資料の整理から始まって、診察、検査と進み、治療へという一連の流れがあります。この一連の作業は、どの科学行為にも共通する観察、分析、判断、立案、実験というルールに則っています。医師の診療行為をこのルールを基づいて提示しなおすと、次のようになります。

表4 診断から治療へ踏むべき過程
 1 基礎資料を集める。
   a 病歴(社会歴・家族歴・既往歴・現病歴)
   b 過去の資料(経過記録・検査資料・検診資料)
   c 身体所見
   d スクリーニング検査所見
 2 基礎資料に基づきプロブレムリストを作成する。
 3 基礎資料をプロブレムごとにSOAPに分けて整理する。
 4 経過記録としてプロブレムごとにSOAPを記述する。


 じつはプロブレムリストが極めて大事なのですが、昨今は誰しもどこかで目にされているであろうSOAPをご説明して最後にプロブレムリストをお話ししたほうが、現実感に即していると思えますので、そういたします。まずは、患者を問診し診察し検査し治療する日常業務をSOAPという内面の範疇にきちっと分けて記録できることが出発点です。それぞれの枠に何を書くのかをお話しします。

表5 考えの仕組み
 S:記録時点までの資料・経緯・症状
 O:記録時点の観察所見
 A:考察・判断・目標・方針(意見の根拠はSとOの中にある)
 P:Dx 診断計画
   Tx 治療計画
   Ex 説明説得計画(患者・その代理人)


SOAPのそれぞれ

 SOAPの範疇の違いを補足して、ご説明いたします。
<SとO>
 SとOの区別を説明します。まれですがS/Oという混同を見かけますので、この区別をはっきりさせたいと思います。まずOは、この時点の観察所見であることを銘記してください。「この時点」がはらんでいる意味は医学上の理解にかかわります。患者の病気の速度、重篤さによって、「この時点」として捉える時間の幅は違うでしょう。正しく賢明に捉えてください。観察者は自分です。自分はもちろん自分自身ですが、この時点で自分とともにある即代行者(信頼している)である他の医師、看護婦も観察者として自分と同列です。たとえば、今測れと命じて看護婦が測定した血圧や尿量はOのなかです。いっぽうSは患者の領分です。患者の症状、患者の観察、自分以外の者(即代行者ではない看護婦、家族など)はすべてSの領域です。そこから広げて、「この時点」で目の前にいる患者についての自分の観察所見はOですが、「この時点」までに繋がってきた過去の領域によこたわる事項はすべてSです。たとえば昨夜の夜勤看護婦の記録や前医の観察所見はSの範疇です。Sの事柄をどっさり持ってやってきた患者が今目の前にいて、自分が観察している、という診療構造です。ですからお分かりいただけるように、過去の資料(そこには、過去の時点でのSやOが含まれているでしょう)はSのなかに記述されます。おおざっぱに自分を軸にした時間区分で出来事を言えば、過去はS、今現在はO、未来はPと言えなくもありません。そして頭の中はAです。
<OとA>
 Oは観察所見です。Oは「事実の記述」です。事実という性質を持った記述ですから、“これ”と言って証拠を差し出せます。その証拠や記述が誤りだということは避けるべく努力していても日常には起こりえますが、Oに書いたことは事実の所見という性質を持った事柄でなければいけません。対比して、Aは意見です。意見という性質を持った言明です。その意見が事実に根拠を置き論理ただしい意見であろうと、曖昧な憶測と風評に終始している意見であろうと、Aには意見というものが書かれます。考察はすべてAの範疇です。O/Aというのを見かけたことがありませんので、この区別は比較的容易と思われます。こうしてSとOとAをただしく区別して書く、つまり考えることによって検証可能な記録となるのです。
<AとP>
 これは、A/Pをしばしば見かけることから分かるように区別できていないことが残念ながら多そうです。Aは「意見の記述」と申しました。そこには考察、方針、目標などの考えが記されます。ところが、計画は方針や目標ではなくて、実際に行う行為そのものです。ですから、人、日時、場所、方法の4W1Hが決まっていなければなりません。そうでなければ計画とは言えません。ついでながらWhyのWはAです。Aは「意見の記述」ですが、Pは「行動計画」です。AとPは一緒にはなりませんし、一緒にしてはいけません。この区別はたいへん大事です。動機や目標がいかようであれ、人、日時、場所、方法を特定した作戦計画を作らなければナンセンスでしょう。Aの目標とPの計画が矛盾衝突していては支離滅裂です。計画ははっきりと意識して書かなければなりません。これから起こることは計画の結果であって動機や目標に直接してはおりません。そのPには、さらに三つのカテゴリーがあります。診断のためのプラン、治療のプラン、そして患者家族へ説明し説得するプランです。別種ですから、やはり分けて書きます。

病気の一覧表=プロブレムリスト

 さて、SOAPの範疇は区別されました。ひとつの病気に対する医師の認識は、このような構造を持っています。換言すれば、このように構造化して理解しなければいけない、ということです。ここまで来ると、次に、同時にある多種の病気をいかに構造化して理解するかの形式が問題になります。その基本枠がプロブレムリストです。これは患者のプロブレムの一覧表です。そこでまずプロブレムについてご説明いたします。詳しくはお手元の「総合プロブレム方式 案内」の「総合プロブレム方式におけるプロブレム」をお読みください。

表6 プロブレム
 1 医学的事態(病気)とその呼び名。
 2 名である名詞。
 3 ひとことで呼ばれる具体的なものの名。
 4 疑いのない事実である名(疑いはプロブレムではない)。

そして、プロブレムリストはその一覧表で次のように記された表です。

表7 プロブレムリスト(図2)
 1 すべてのプロブレムが漏れなく書かれる。
 2 番号が登録順につけられる。(注;#ナンバー・♯シャープ)
 3 登録の日付が書かれる。
 4 呼び名の深化が → で展開される。
 5 転帰が明示される。


プロブレムリスト=病気の構造

 このように書かれたプロブレムリストは主治医の管理に委ねられます。言い換えればプロブレムリストが書かれることによって主治医がそこに所在していることが明示されます。プロブレムリストが患者の診療の基本枠となって、いかに日常に寄与するかを例示いたします。

カルテ形式の品質図.jpg
 患者 A  プロブレムリスト 1
       #1 高血圧症 〔00・1・1〕

はじめは患者のリストはこのようでした。#1高血圧症のSOAPが書かれてあります。 ついで糖尿病が発症して発見されました。

 患者 A  プロブレムリスト 2 
       #1 高血圧症 〔00・1・1〕
       #2 糖尿病 〔01・1・1〕

その後患者は発熱し当初、発熱の名で呼ばれた病気は肺炎と分かりました。そして無事に治りました。

 患者 A プロブレムリスト 3
       #1 高血圧症 〔00・1・1〕
       #2 糖尿病 〔01・1・1〕
       #3 発熱〔02・1・1〕
           →急性肺炎(肺炎球菌)〔02・1・5〕→治癒〔02・1・20〕〈済〉

本年に急性心筋梗塞で救急へ来ました。これも無事に経過しました。

 患者 A  プロブレムリスト
      #1 高血圧症 〔00・1・1〕
      #2 糖尿病 〔01・1・1〕
      #3 発熱〔02・1・1〕
          →急性肺炎(肺炎球菌)〔02・1・5〕→治癒〔02・1・20〕〈済〉
      #4 急性心筋梗塞〔03・1・1〕→治癒〔03・1・31〕〈済〉

検診で検便潜血を指摘されたので検索した結果、大腸ポリープが見つかってポリペクトミーが施行され、以後は年に1回チェックを受けることになりました。

 患者 A  プロブレムリスト 5
      #1 高血圧症 〔00・1・1〕
       #2 糖尿病 〔01・1・1〕
       #3 発熱〔02・1・1〕
           →急性肺炎(肺炎球菌)〔02・1・5〕→治癒〔02・1・20〕〈済〉
       #4 急性心筋梗塞〔03・1・1〕→治癒〔03・1・31〕〈済〉
       #5 大腸ポリープ〔03・2・1〕

このとき胃癌が発見されました。外科は患者をこのプロブレムリストとともに受け取りました。ご注意したいことは、高血圧症や糖尿病や大腸ポリープは決して既往症ではありません。胃癌の前からすでにあって今もある事態、既存症です。しばしば、これらを既往症と認知する誤りを見ますので、あえてご注意申します。すでに治癒して消えた事態、急性肺炎や急性心筋梗塞が既往症です。

 患者 A  プロブレムリスト 6
       #1 高血圧症 〔00・1・1〕
       #2 糖尿病 〔01・1・1〕
       #3 発熱〔02・1・1〕
            →急性肺炎(肺炎球菌)〔02・1・5〕→治癒〔02・1・20〕〈済〉
       #4 急性心筋梗塞〔03・1・1〕→治癒〔03・1・31〕〈済〉
       #5 大腸ポリープ〔03・2・1〕
       #6 胃癌〔03・3・1〕

そして胃癌の手術がなされました。

 患者 A  プロブレムリスト 7
       #1 高血圧症 〔00・1・1〕
       #2 糖尿病 〔01・1・1〕
       #3 発熱→急性肺炎 〔02・1・1〕
            →急性肺炎(肺炎球菌)〔02・1・5〕→治癒〔02・1・20〕〈済〉
       #4 急性心筋梗塞〔03・1・1〕→治癒〔03・1・31〕〈済〉
       #5 大腸ポリープ〔03・2・1〕
       #6 胃癌〔03・3・1〕→治癒(胃半切除術)〔03・4・1〕〈済〉

この際ついでに白内障の手術が予定されました。

 患者 A  現在のプロブレムリスト
       #1 高血圧症 〔00・1・1〕
       #2 糖尿病 〔01・1・1〕
       #3 発熱〔02・1・1〕
             →急性肺炎(肺炎球菌)〔02・1・5〕→治癒〔02・1・20〕〈済〉
       #4 急性心筋梗塞〔03・1・1〕→治癒〔03・1・31〕〈済〉
       #5 大腸ポリープ〔03・2・1〕
       #6 胃癌〔03・3・1〕→治癒(胃半切除術)〔03・4・1〕〈済〉
       #7 白内障〔03・4・1〕~

現在は#1高血圧症・#2糖尿病・#5大腸ポリープ・#7白内障の治療中です。既往症は、急性肺炎、急性心筋梗塞、胃癌です。こうしてプロブレムリストを見れば、歴史を俯瞰するのと同じで、患者の医学的構造が一目瞭然に分かります。そして各プロブレムについて個別にSOA(P)が書かれてあれば、そのプロフィールがはっきりします(Pが各プロブレムに重なる場合は患者単位でまとめて最重要プロブレムのところ書かれます)。 外科や麻酔科にとっても術前の事態がたちどころに掌握できます。脱落や誤認を避けることができます。このように患者が常時プロブレムリストとともにあれば、いつでも、どこででも、院内においても病診連携においても、なめらかに診療できます。

ここで、付言してご注意を申し上げます。昨今各処で、プロブレムリストとして書かれている本邦POSのリストを見ますと、多くはプロブレムリストではなくて、いわば患者の目先トラブルか異常事項のメモというか、調べて勉強する覚書といったたぐいのものです。そこには、病名は書かれていません。病名を書く前の段階であって、こういった事柄を調べ分析して病名に到達するのです。このあとに書く病名の形式がありません。ただしく病気のリストとしてプロブレムリストを書かないと、ただいま申し上げたようなご利益にはあずかれません。総合プロブレム方式プロブレムリストと敢えて呼ぶのは、プロブレムリストとだけ呼んでいると本邦POSのリストと内容を誤認される恐れからです。内容が違えば呼称も違います。

異常事項メモ

 患者 Y  異常事項メモ
      #1:胸痛;
     #2:肝癌うたがい
      #3:貧血
      #4:ALP高値
      #5:アルコール多飲
      #6:浮腫
      #7:脳梗塞の既往
      #8:CRP上昇

この患者のプロブレムリストを作成すると、

 患者 Y  プロブレムリスト
      #1 狭心症
      #2 肝硬変
      #3 小球性貧血→鉄欠乏性貧血
      #4 弧発性肝腫瘤→肝癌
      #5 発熱→急性尿路感染症

違いは明瞭です。異常事項メモの勉強会リストでは患者の構造は分かりませんし、さきほど申し上げたような利益は求められません。プロブレム(病気)のリストではないからです。

最後にまとめて申します。プロブレムリストを作成し、そして、各プロブレムについて、SOA(P)が書かれた業務日誌がもっとも形式として品質の良いカルテです(図1)。次のように書きます。詳しくは「案内」の「カルテの書きかた」の項をご一読ください。

 プロブレムリスト
  #1 プロブレム X〔登録の日付〕
  #2 プロブレム Y〔登録の日付〕
     以下 同様
  #1 プロブレム X
        S:・・・
        O:・・・
        A:・・・
      (P:・・・)
  #2 プロブレム Y
        S:・・・
        O:・・・
        A:・・・
      (P:・・・)
    以下 同様

形式は、それに則って書き続ければその形式に当てはまるように考えるようになります。形式の重大な意義がここにあります。雑記帳は形式不要の例ではないどころか、これもまた一つの形式です。考えがばらついてまとまりを欠くことを許す形式です。プロブレム混沌SOAP形式は区別されるべきことを区別しないままにしておくことを許容します。その形式に則りつづければ、区別する力が身につかないままに終わります。あたかも、使いつづけて知らないうちに言葉の文法が身につくように、形式の考え方はひとりでに身につきます。
新しい形式はいわば新しい文法のようなもので慣れるまでは時間がかかりますが、いったん慣れれば簡単です。混乱を避ける品質高い診療の手立てとして、この新文法の言葉でカルテを書き続けられることを願います。
                                           了。

会場質疑

質問;看護婦が所見を(たとえば血圧や肺の聴診所見)医師と同じOに書いてよいか?
返答;自分に代わって自分以外の者が信頼し得る観察をしたとして、その所見を自分の所見でもあると考えるならば、サインをして書いてかまわない。よって当然、stridor、wheeze、rhonchi、crackleを正しく区別して所見を取れるように看護婦を訓練してあることが前提。
質問;POSとプロブレムリストが違うと思うが。
返答;違う。Weed SystemのPOMRでは、例示した異常事項メモのように範疇の違った事柄がプロブレムとして書かれた。だから、入院のたびに前のリストは棄却されて新たに事項メモが書かれた(伝聞)。総合プロブレム方式プロブレムリストはWeed Systemのリストとは異なり、病気のリストであって時空を超えて継続して使われる。診療は継続性がなければならない。
質問;外科系では、この形式は採り入れがたい。
返答;外科系にこんにちただいま採用できるとは考えない。まず内科からはじめる。外科や麻酔科が術前検討に有用であるプロブレムリストを書くように内科医に要請することから始めてはどうだろう。この形式で書いた研修医たちが外科医となる何年か先には、外科においてもこの形式に親和するだろう。
質問;看護婦にも医師の考えがよく理解できる。看護婦のためにもこの形式がよい。
返答;看護婦のためにと考えたわけではない。医師である自分の仕事に正しい手助けが要るので看護婦にも事態を正しく明瞭に理解させる必要がある。看護婦のためにではなく、医師である自分を全うするために、と言える。責任は畢竟医師である自分にある。
質問;SOAPというカルテを試みたが、そのうち誰もしなくなってしまった。つづけているところはあるのだろうか? 続かないのはなぜだろう?
返答;いくつかある。例示した実例のとおり。混乱プロブレム、プロブレム混沌あるいは異常事項メモ形式では、診療内容の明瞭な表示はできない。役に立たなければ続ける意味がないからだろう。形式は講演や書物だけでは身につかない。毎日のワンツーワンの実践教育によって身につく。
 (返答 同行の卒後4年目医師;はじめは、なんと細かいことを注意される、と思った。しょっちゅう直された。でもいまは、はじめて見るような難しい複雑な患者が来ても良く分かるようになった)


添付ファイル: fileカルテ形式の品質図.jpg 2608件 [詳細] fileカルテ形式の品質図2.jpg 660件 [詳細] fileカルテ形式の品質図1.jpg 1062件 [詳細]

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Last-modified: 2007-12-09 (日) 20:32:45 (3425d)