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58回CPC報告


第58回内科学研鑽会臨床病理検討会(平成19年1月27日)報告書

司会(岐阜医療センター 総合内科 村山正憲)
〈症例に対する質問〉
森田Dr(岐阜大学附属病院):皮疹について詳しく知りたい。紅いのか?鱗屑はどこにあるのか?
主治医:境界不鮮明に紅い。発疹の中の潮紅している中に鱗屑がある。
森田Dr:ペットは飼っているか?
主治医:飼っていない。
山田Dr (聖隷三方原病院):皮疹に圧痛は?
主治医:ない。

〈主討論〉厚生連海南病院 総合内科 後藤啓介医師 (平成16年卒)
#1 前立腺肥大症
#2 紅皮症→セザリー症候群
#3 間質性肺炎
診断手技:①不明 ②経気管支肺生検

#1 前立腺肥大症
この時点でリストに前立腺腫大症として挙げることは、実際的であり妥当であると考える。ただいまは尿閉になっていない限り、急を要しない。

#2 紅皮症
体幹・四肢を中心に全身性びまん性に皮膚が潮紅し、落屑や激しい掻痒を伴っていることから、これは紅皮症であるといえる。頭髪の脱毛を認め、非常に重症かつ特異的なこの事態は、まさしく#2の本体である。紅皮症としての発症は2006年2月からであるが、プロブレム#3としての発症は不明、発症の誘因も病歴からは明らかでない。以下、紅皮症の鑑別に進むが、その前に本プロブレムの及ぶ範囲についてすこしだけ言及しておく。
時間的経緯から、発熱、全身性リンパ節腫脹、末梢血中の骨髄球や異型リンパ球の出現、フェリチン10,000の異常高値などはすべて本プロブレムに属すると考える。発熱は悪寒戦慄を伴わず、血液培養は4セットとも陰性。菌血症の存在は積極的には考えられない。リンパ節は解剖学的リンパ流に一致せず全身性に腫脹し、週の単位で急速に増大した。圧痛なく、弾性軟であり、また、ステロイド投与に反応してはっきりと縮小したことからまずは悪性リンパ腫を疑いたい。一般に、末梢血中の異型リンパ球は血液腫瘍細胞、いわゆる異常リンパ球との区別が必ずしも容易ではない。また、核の左方移動では骨髄球はほとんどみられず、後骨髄球があっても少数、桿状核球が多数であるのが通常である。この症例では後骨髄球や桿状核球がないにもかかわらず骨髄球が末梢血中に出現しているが、ここで2つの可能性を考えたい。骨髄球と表記されている細胞が実は血液腫瘍細胞である可能性と骨髄転移によってgate controlが破綻している可能性である。Gaシンチでの骨への集積は不明瞭であり、検体は病変を捉えられていないかもしれないが、胸骨からのマルク標本では明らかな異型細胞はみられなかった。顆粒球系の増加を認めているが、分化に異常なく核の左方移動も認めなかった。血球貪食像はなかったとのことだが、血球貪食像の有無の信憑性は病理医の技量によって大きく左右される。本症例ではフェリチン値から血球貪食はあったと考える。末梢血中の好酸球増多も認めるが、IL-5を産生する悪性リンパ腫でもよくみられる。血清フェリチン値が5,000を超えるとき、鑑別疾患は血球貪食症候群とStill病である。Still病が疑われない本症例では、血球貪食を伴う悪性リンパ腫にほぼ限られてくる。
以上を踏まえ、紅皮症の鑑別に進むが、ここに至るまでにすでに鑑別は絞られた。本症例は悪性リンパ腫である。紅皮症を来たす悪性リンパ腫としては、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症/Sezary症候群)、成人T細胞白血病、Hodgkin病が挙げられる。HTLV-1抗体陰性から成人T細胞白血病は否定的。Hodgkin病としても非連続性のリンパ節腫脹や節外臓器浸潤が多いことから非典型的である。皮膚だけにとどまっていない本症例はSezary症候群であろう。多関節炎も紅皮症と時期を同じくして出現してきた。両側対称性に大関節を侵すnon-erosive seronegative polyarthritisであり、種々の鑑別が挙げられるが、本症例の場合は血液腫瘍細胞の浸潤であろう。Sezary症候群では足関節が最も侵されやすい。末梢血にみられたatypical lymphocyteをもう一度確認しておきたい。皮膚生検は繰り返し行う必要がある。末梢血中のT細胞表現マーカーのチェックやモノクロナリティーの証明も有用かもしれない。また、リンパ節生検はしておきたい。
ちなみにsubclinical hypothyroidismがあるようだが、現時点では積極的な治療を必要とせず、本プロブレム内で扱うことにする。

#3 間質性肺炎
#3よりも1年先行して出現した2005年の間質性肺炎とその1年後に出現した2006年の間質性肺炎がある。
まず2005年3月のHRCTを評価する。両側肺底部の胸膜直下が中心に侵されている。両側で見比べてみると病変分布は類似しており、病変の時相は均一である。構造改築に乏しく、蜂巣肺はみられないが、牽引性気管支拡張像はみられる。血管気管支周囲性分布の不整な融合影がみられ、air bronchogramを伴う。この画像所見から挙げられる鑑別診断は、特発性間質性肺炎でいえば、NSIPのcellular type、RB-ILD (respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease)、DIP (desquamative interstitial pneumonia)である。濃厚な喫煙歴があること、禁煙してから軽快したという臨床的背景を考慮すると後2者が疑われる。病因の明らかな間質性肺炎としては、膠原病肺、過敏性肺臓炎、薬剤性肺臓炎、感染性肺臓炎が挙げられる。膠原病肺としてはamyopathic DMが鑑別に挙げられるが、それを積極的に支持する症状・所見はない。過敏性肺臓炎は否定できないが、日本に多い夏型は7〜9月に好発する。薬剤性は病歴から考えにくい。種々の微生物学的検査は全て陰性であったことからも感染性肺臓炎は除外してよかろう。結論としては、RB-ILD/DIPが疑われるが、2005年の間質性肺炎は症例呈示者も既往歴で扱っているとおり、治癒〈済〉である。便宜上、ここで議論した。
2005年の間質性肺炎は治癒したが、1年後に間質性肺炎が再び出現している。この2点でのHRCT所見は似ており、胸膜直下が侵され、小葉間隔壁の肥厚や血管気管支周囲性分布の融合影がみられる。しかしながら、2006年の肺炎では牽引性気管支拡張像が軽度であり、病変の時相は不均一で、片側優位にみられる。ここまでの経過では断定はできないが、おそらく別の病態であろう。ステロイド投与で増悪していることからは感染性肺臓炎を鑑別に挙げたい。#2の存在からはリンパ増殖性疾患の浸潤も疑われるが、ステロイドで増悪したことからはやや考えにくい。好酸球性肺炎なども同様。明らかな免疫不全のない高齢男性に生じた非定型肺炎として鑑別することになるが、ステロイドパルスの修飾も受け、病因の特定はますます困難である。型どおり、マイコプラズマから始まり、抗酸菌、真菌、ウイルスなどの議論になるわけだが、結局のところtissue is issueである。これ以上の議論は控える。

〈主討論に対する質問〉
池上Dr:診断手技はどう考えたか?
後藤Dr:上記
村山Dr:主討論者は紅皮症と捉えて議論の出発点ということだが、他に除外したものは?
後藤Dr:紅皮症の定義を満たしている。鱗屑、掻痒感を伴う事からも典型的と考えた。
森田Dr:紅皮症で紅いのは血管が拡張している病態のことか?とすれば、皮膚病理像をどう考えるか?
後藤Dr:皮疹には原発疹と続発疹がある。紅皮症は皮疹としてのnamingではなく、病態として捉えたものと思う。確かに病理像は典型的ではないが、紅皮症の中でもphaseが様々なので矛盾はしないと思う。
森田Dr:主治医に確認したい。病変部から生検したのか?
主治医:鱗屑、角化を伴う部分よりやや上の赤みがかった所を生検した。
森田Dr:皮膚生検で腫瘍細胞を認めなくてもセザリー症候群としてよいのか?
後藤Dr:セザリー症候群では皮膚生検を繰り返すことが重要とされる。一回で腫瘍細胞が出るとは限らない。
村山Dr:フェリチンの値を根拠に鑑別診断を絞ったようだが、その辺りについて詳しく。
後藤Dr:フェリチン5000以上となると血球貪食症候群か成人スチル病しかないとティアニーDrは述べている。その二つに集約されると考えてよいと思う。血球貪食像があれば血球貪食症候群しかない。
村山Dr:マクロファージの活性化によるフェリチン高値は、腫瘍性ならば血球貪食症候群、反応性ならば成人スチル病と捉えたということでよいか?
後藤Dr:良い。症例報告レベルでは、乳癌に伴う血球貪食などもある。
村山Dr:マルクではマクロファージの増加なし、血球貪食像なしとわざわざ断ってあるが、繰り返し確認したということか?
主治医:繰り返し確認した。
山田Dr (岐阜大学附属病院神経内科):2005年の肺炎に関して、今回の肺炎と同じと考えているか?また、自然軽快しているが、こうした事はよくあることか?
後藤Dr:今回の肺炎とは別のものと考えている。今回の間質性肺炎を論じるに当たり、昨年のものについて検討する必要があると考えて#3の中で述べた。2006年は気管支牽引像が弱く片側優位で時相が異なることが2005年とは異なる。
2005年は禁煙している。禁煙のみで、ある種の間質性肺炎 (RBILD) は軽快する。2005年は禁煙により軽快したのではないかと考えている。
鈴木 (弘) Dr:#2の病態は、皮膚症状、多発関節炎が中心と考えた。乾癬、乾癬性関節炎についてはどう考えたか?
後藤Dr:鑑別に入ると思う。しかし、リンパ節腫脹、フェリチン高値、末梢血中への骨髄球出現が矛盾すると考えた。
草深Dr (名古屋記念病院):以前から認められる肝機能障害についてどう考察したのか?主討論の中ではあまり述べられていなかったが。
後藤Dr:#2の腫瘍細胞の浸潤かもしれない。ステロイド投与後に悪化しており、#3かもしれない。非定型肺炎に伴うものかもしれない。自分は#3の中で扱うべきと思っている。

〈メールで寄せられたリスト>
鈴木Dr(名古屋大学附属病院 平成17年卒)
#1 慢性間質性肺炎
#2 乾癬
#3 乾癬性関節炎

石山Dr(名古屋記念病院 代謝内分泌科)
#1 多発関節炎→SLE 
#2 肺浸潤影  
  #1に対しての診断行為は抗ds−DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体
  #2に対してはTBLB

〈病理報告・その後の経過〉
主治医のプロブレムリスト
#1 多発関節炎【06.4.18】
→成人スチル病【06.4.26】
#2 慢性肝炎【06.5.11】
#3 急性肺炎【06.6.6】
→治癒【06.6.29】<済>
#4 副鼻腔炎【06.6.29】
(→アスペルギルス上顎洞炎)

 ある検査①は肝生検 (4月17日実施)。
 線状3cm、数mmの標本で線維帯を伴い、小葉への単核球浸潤を伴う。血管炎所見なし、肉芽腫なし。肝細胞索の配列不順があり、グリコーゲンを含む核の散在が見られる。2核の肝細胞が散見され、一部に偽小葉形成を認める。
 Etiologyはわからないが、慢性肝炎の所見。

 ある検査②は副鼻腔X線、CT検査。
 結果は下記。

#1
経過:ステイロイド治療開始後、皮疹は急激に軽快。関節痛も消失した。ステイロイドは漸減中であるが、末梢血に1〜2%程度異型リンパ球がしばしば観察され、LDH400台(正常210以下)が継続している。

#2
経過:肝生検以後、組織学的変化を始め、臨床的にも変化があるかどうかは不明。

#3
経過:ステロイド治療開始後、#1の皮疹よりやや遅れて?もしくは同時に軽快した。再発なし。

#4
経過:6/5にガラクトマンナン抗原陽性血症が判明。その直後にXpとCTで右上顎洞後壁の骨肥厚と内部の液体貯留が判明した。副鼻腔炎に特異的と思われるような鼻汁・鼻閉・頭痛・頬部痛等の症状は観察されなかった。5/28より開始したボリコナゾールが奏効したためか、その後液体貯留消失、ガラクトマンナン抗原陰性化。

<病理所見・その後の経過に対する質問>
保井Dr (海南病院):結局皮疹は何によるものだったと考えるか?
主治医:成人スチル病による非定型的皮疹と考えている。
保井Dr:HBs抗体などは測定したか?
主治医:していない。
保井Dr:副鼻腔炎の検体はどうだったか?培養結果は?
主治医:培養を耳鼻科で提出してもらった。どこからかはっきりしないが陰性だった。
服部Dr (岐阜大学附属病院):皮疹は実物を見ると乾癬に似ているが、Auspiz現象は?ケブネル現象は?
主治医:Auspiz現象認めず。ケブネル現象未検。
服部Dr:皮膚病理像がステロイドで修飾されている可能性はどう考えるか?
主治医:その可能性は確かにあると思うが、表皮にあまりに変化が乏しい。真皮に軽度の炎症があるのみ。皮膚科医も乾癬では矛盾するとの見解だった。
服部Dr:頭痛や悪臭を伴う鼻汁はあったか?
主治医:副鼻腔炎に関する症状は一切なかった。
草深Dr:自分もこの症例はリンパ腫と思っていた。ステロイドに対する反応をみるとスチル病でよかったのかとも思うが、ステロイドでリンパ腫がマスクされた可能性もあると思う。リンパ腫なのか、スチル病なのか迷うことがあったと思う。それぞれの局面で主治医はどう考えていたか?
主治医:4月26日退院時スチル病とプロブレムを展開した時には、リンパ節がほとんどはれておらずリンパ腫ではないだろうと思っていた。
 しかし、ゴールデンウィーク明けに全身状態が悪化していた時はリンパ腫かと思い、腋窩リンパ節生検を考えた。エコーで見ると扁平だったこともあり、治療開始を待てないと思い、ステロイドパルスを開始した。
急にフェリチンが上昇し#3も起きたときにはまた迷った。
#1が本当にスチル病かどうかはまだこれから経過をみないといけないと考えている。
後藤Dr:熱型は?末梢血骨髄球の出現はどう考えたか?
主治医:熱型は1日2-3回spike feverを認め、カロナールで37℃ぐらいまで下がる。
 末梢血骨髄球は入院時のみで以後は出現していない。以後は中毒顆粒、後骨髄球が出てくることがあった。骨髄穿刺の所見をみて、反応性に好中球産生が亢進した結果でよいと判断した。
草深Dr:肝生検を行った理由は?スチル病とは関係ないと思う。何を決め手に踏み切ったのか?
主治医:肝肉芽腫症、肝悪性腫瘍、血管炎を念頭に置いていた。実際出てきたのは非特異的な慢性肝炎ということで予想外の結果だった。成人スチル病と慢性肝炎の関係もわからないが、おそらく以前からの慢性肝炎ではないかと考えている。
村山Dr:慢性肝炎をプロブレムにあげているが、どの時点を持ってあげたのか?再入院の際にあげたのか?画像を持ってあげたのか?
主治医:もともとは成人スチル病に含めていたが、どう考えても別件と考えて別に#2としてあげた。
村山Dr:今回の症例は、皮膚と関節炎が成人スチル病のような反応性の病態なのか、腫瘍性の背景があるかが、鍵になると思う。

<総合討論>
村山Dr:主討論者のプロブレムリストを元に研鑽会としてのリストを作成する。
#1 前立腺肥大症についてどうか?一貫して頻尿があるが、主治医は考えたか?
主治医:超音波検査でも、前立腺の大きさもさほどでなく、しいていえば頻尿症だがプロブレムとしてあげるほどではないと考えた。
後藤Dr:夜間5回以上というのはプロブレムとしてあげてもよいかと考えた。肥大症で見られる内腺の腫大は大きさに反映しないと思う。
渡部Dr:あげなくて良いと思う。
→多数 (病態がはっきりしない。)
村山Dr:では、メジャープロブレムには登録しないこととする。#1は主討論者が紅皮症と捉えた病態とする。この病態をどう認識するか?実物の写真をみると紅皮症というのは抵抗があると思うが。
 主治医は多発関節炎としているが?
森田Dr:自分は紅斑とあげた。より特異的なものをプロブレムとしてあげるべきと考える。皮膚所見をあげたほうが特異的と思う。皮膚科医は皮膚所見をどう表現しているか?
主治医:皮膚科医は紅斑としている。もしかすると皮膚筋炎かもしれないとのことだった。
村山Dr:#1 紅斑では良いか?自分は落屑性皮膚炎として、関節炎はその中に含めた。
後藤Dr:鱗屑も伴っている。紅斑だけでは皮膚所見と合致しないと思う。自分は実物を見てもやはり紅皮症でよいと思う。紅斑というには斑の大きさを超えている。皮膚炎というと皮膚しか含んでいないと思う。全身性であること、落屑を伴うことも盛り込みたい。
村山Dr:紅皮症にしては正常皮膚がかなり混ざっているのが気になる。
栗本Dr:記述的に全身性掻痒性落屑性皮膚炎と考える。
主治医:皮膚炎ということはそこにneoplasmはいないということか?
栗本Dr:そうではない。どこかにneoplasmはいてもよいが所見に記述的に名前をつけた。
山田Dr (聖隷三方原病院):潮紅していた所は、体表面積の何%ぐらいか?
主治医:10-20%ぐらいかと思う。
後藤Dr:10-20%だと、紅皮症とはいいにくい。#1 全身性掻痒性落屑性皮膚炎に賛成する。→異議なし。
村山Dr:多関節炎はどうするか?違う病気と考えるなら別にあげることになるが?
渡部Dr:多発性紅斑と関節炎とそれぞれclinicalに甚だしい。Etiologyはひとつではないかと考えたが、別々に検討した。最終的に成人スチル病により両者が生じたと考えた。成人スチル病と考えた決め手は二回目の入院の咽頭痛。
後藤Dr:皮膚も関節も激しいが、経過が一致しており病気としては一つだと思う。プロブレムはひとつでよい。→多関節炎はあげない、が多数。
村山Dr:主治医のリストでいう#2 慢性肝炎をプロブレムとしてあげていたか?
草深Dr:自分は4月7日の時点でプロブレムとしてあげていた。
森田Dr:ステロイド投与でトランスアミナーゼ値はどうなったのか?
主治医:ボリコナゾールによる副作用もあり、トランスアミナーゼは増減していた。
後藤Dr:#1と経過も異なる。ステロイド投与によって悪化したようにもみえる。とすると、Occult HBV infectionも鑑別に入る。やはり別プロブレムだったと思う。→異議なし。
村山Dr:では、#2 慢性肝炎とする。
 #3はどうするか?間質性肺炎?急性肺炎
山田Dr (聖隷三方原病院):急性間質性肺炎ではどうか?
後藤Dr:急性間質性肺炎ではHamman-Rich症候群を一般に示す。この用語を用いるのは良くないと思う。2005年の肺炎と同じだったか否かを整理しておく必要がある。
村山Dr:2005年と同じだったかどうかは、検討が難しい。その点からも急性とつけるのは難しいと思う。
#3 間質性肺炎でよいか?→異議なし
 それでは#1の展開について検討する。成人スチル病に展開でよいか?
栗本Dr:到底納得できない。では何かといわれると困るが。
後藤Dr:成人スチル病はいわばゴミ箱診断。成人スチル病としても非典型的で違和感がある。
村山Dr:主治医もかなり思い切って展開したということだったが。成人スチル病自体がこれをもって展開できるというものがない。
栗本Dr:ステロイド軟膏はどれぐらい使ったのか?皮膚生検で細胞は何が多かったか?免疫染色は行ったか?monoclonalityはチェックしているか?また末梢血の異型リンパ球はどうなったか?
主治医:細胞で何が多かったかは不明。免疫染色は行っていない。ステロイド開始後も末梢血中の異型リンパ球は時々1-2%出現している。
服部Dr:皮膚のT細胞リンパ腫と考えた。ステロイド投与後、可溶性IL-2RやCRPはどうなったか?
主治医:可溶性IL-2Rはその後測定していない。CRPは正常化した。
村山Dr:この症例の鍵は、背景に悪性腫瘍が潜んでいるかどうか、潜んでいるならどこにあるのかだと思う。ステロイド漸減していても再燃はまだしていないが、本当に潜んでいないといってよいのか、ということになるが。
森田Dr:皮膚科から皮疹がparaneoplasticの可能性の指摘は?
主治医:指摘はなかった。
森田Dr:成人スチル病としては、皮疹があまりに非典型的と思う。リンパ腫が潜んでいるのではないかと思える。
後藤Dr:現在のステロイド投与量は?減量は順調か?
主治医:現在プレドニゾロン5mg。2ヵ月で30mg減らしている。外来通院になってからはゆっくり減らしている。
村山Dr:#1を成人スチル病と展開するか?しないか?
→展開しない、が多数。
村山Dr:#4 副鼻腔炎はどうするか?高ガラクトマンナン血症?
主治医:ステロイド開始後に高熱が出ていた。この5月21日以降の発熱をガラクトマンナン高値、副鼻腔CTの結果を持って#4と考えた。あげないとするとこの発熱をどこで扱うのか?
村山Dr:#1?#3?やはり#4の中か?このプロトコールからどこまで導けるかという観点も必要。
主治医:ガラクトマンナン抗原index 4.0は異常に高い。血液疾患の患者などではこれだけでアスペルギルスを強く疑うべき。X線写真からアスペルギルス肺炎とはとても考えられない。#3とは思えない。
渡部Dr:本当に副鼻腔炎かも疑問がある。抗真菌剤を続けて液体が消失したからといって、この間の高熱が副鼻腔炎だったかも不明。発熱、咳、痰はやはり肺炎で、よくわからないが治ったという可能性を考える。
村山Dr:高ガラクトマンナン抗原血症はあげるということでよいか?ここまでの議論だとマイナープロブレムでよいか?→異議なし。             <了>

〈内科学研鑽会としてのプロブレムリスト〉
#1 全身性掻痒性落屑性皮膚炎
#2 慢性肝炎
#3 間質性肺炎
#a 高ガラクトマンナン抗原血症

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コメント (1)

長野赤十字病院内科の清水郁夫と申します.

この症例はやはり悪性リンパ腫,特に血管免疫芽球性リンパ腫(angioimmunoblastic T cell lymphoma)の可能性を考えるべきではないかと思われますが,いかがでしょうか.

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