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カルテの書き方


座談会 2001年10月13日
A: 国立S大学医学部 平成6年卒
B: 国立G大学医学部 平成11年卒
C: 国立N大学医学部 学生

A:じつは実習に来ていたC君から、先日カルテについて質問されました。大変重要な点 をはらんでいますのでC君に答える意味も含めて、違う病院のB先生にも話に加わって貰 いたいと思いました。

B:話を伺って前もってC君の大学のポリクリ(医学生授業実習)例を見せて貰いました。
たしかにとても大事な疑問ですね。自分が学生だった頃の経験も思い出しながら、私なり にお話しできることもありそうです。

 

プロブレムのところには何を書くのか。

C:プロブレムにいくつも言葉を書いていいんですか? A先生のカルテだとプロブレム に糖尿病とか、肺癌とか書いてあるのでちょっと違う印象をもつのですが。

A:例を挙げてください。

C:#1胃炎症状・便秘・上腹部圧痛。 

B:うーん、それって診察時の症状や所見を羅列してるんじゃない?

C:ええ。でも患者の問題ではないですか?

B:そうかな。ところでそのモンダイって目先のトラブルのこと? それとも患者の病名?

C:トラブルといわれればそうです。病名じゃないです。

B:プロブレムに目先トラブルを書いておいたとして、病名は何処に書くの?

C:それもプロブレムに。

B:じゃあ、プロブレムっていろいろ何でも詰め込むところ?

C:それじゃおかしいと思うのですが、どうもすっきりしないんで。

B:一歩譲って目先トラブルを書いてもよしとした場合、明日には上腹部圧痛がなくなっ てかわりに右下腹部圧痛があらわれたら、どうするの? #1胃炎症状・便秘・右下腹部 圧痛と書き直すの? 便秘も治まって軟便になっちゃったらそれも書き直す?

C:・・・。そうなっちゃいますね。それに・・・。

B:それに何?

C:同じ番号#1なのにコロコロと中身が変わりますね。

B:そうなのよ。昨日と今日と明日と毎度中身が違うことを良しとするなら、プロブレムという特別の場所が無いのと同じね。そんなものがわざわざ無くってもいいじゃないかし ら?

C:そうですね。プロブレムは、トラブルのごった煮ではいけないか。

B:そのうち、#1だか#2だかわけが分からなくなっちゃうよ。

C:そうなんです。書かれたカルテを見ていると、#1と番号が書いてあっても始めとはつぎつぎ違っているんです。

A:それではプロブレムが書いてあっても書いてなくても同じです。目先トラブルをプロ ブレムに書いてはそういうことになってしまいます。大事なことですから何度でも繰り返して言いますが、プロブレムは患者の疾病病名です。そうだからプロブレムリストが継続性を持つことが出来る。毎回書いて前のを棄てては継続性は失われてしまいます。意味がない。これは、プロブレムの概念を正しく理解してないからです。というより概念を正しく創りあげなかった。

B:私も学生当時を思い出すと、#1しびれ・右足運動障害・言語障害などの自覚症状とCT異常所見、とか#1夜勤連続のコンピュータープログラム作成、この2年間、といった度肝を抜かれるカルテを教わりました。

C:夜勤連続ともなると、人の生活のありさまで目先トラブルでもないですね。僕が見たカルテにそういうのはありませんでした。

 

病名は始めは分からないのでは?

C:でも、プロブレムが疾病病名としても始めは病名は分からないんじゃないですか? だから糖尿病とか肺癌とか書けないので、口渇・多尿とか、咳・胸部写真異常になるのでは?

B:はじめから分かることはあまりないわね。でもね、病気があるんでしょう? なんとか名前をつけるのよ。口渇・多尿は症状ですね。胸部写真異常は所見です。それが病名? 咳・胸部写真異常が病名なんて変でしょう? これはその時の目先トラブルだからです。そういう症状や所見を呈している病気があるのですね。現時点でその病気に名前をつけて呼ぶなら、なんて呼ぶ? 一番よい名前を選んでね。

C:うーん。でも糖尿病と思うけどまだ確定しないし・・・。糖尿病の疑い、とするか・・・。

B:疑いは病名?

C:いや、違うけど・・・・。

B:疑いなんて病名じゃないわ。じつはね、疑いをプロブレムに書いてはいけないとある先生から私もポリクリで聞いたことはあるの。どうしてかなあ、と思いながらも、結局どの先生も疑いでまかり通っていました。そしてね、疑いはいけないというだけで、ではどう考えるかは言われなかった。いまは、はっきり、疑いはプロブレムじゃないって納得です。

C:どうすればいいんですか?

A:口渇・多尿がありますね。高浸透圧利尿で水を飲みたいのですか? 低浸透圧尿なのに多尿で水を飲む? あるいは飲水がとても多くて多尿なのか? 口渇と多尿の因果関係くらいはすぐに分かるものです。分かる力がなければいけない。分かれば病名を、口渇・多尿という目先トラブルとしてではなく、糖尿症とか高血糖症とか多飲多尿症、とか名づけることができるでしょう? すくなくとも、それがこの人の現時点の病名です。糖尿病とか、尿崩症とか心因性多飲症とかは、まだ確定してなくても、これが今の病気であることには一点の疑念もない、ですね?

C:はい。でも確定すれば糖尿病や尿崩症になるのですね? すると、多飲多尿症がそのように変わるとすればプロブレムには継続性があって変わってはいけないとした先程と矛盾しませんか?

A:目先トラブルがコロコロ変わるのと全く違います。まず、コロコロとは変わらない。なにせ病名だから。#1糖尿症が確定されて、#1糖尿病になるのは、目先トラブルで変わるのと本質的に意義が違いますね。#1肺腫瘤が#1肺癌にかわるは、病名の深化です。肺癌から肺腫瘤に後戻りすることは決してありません。上腹部痛が下へ行ったり消えたり又出たりとはまるで意味が異なることを言うのは蛇足ですね。この病気の名前ですから、多飲多尿症がつぎに尿崩症にかわることがあっても心筋梗塞に変わることはありません。

C:プロブレムが患者の病名だとよく分かりました。しかし、あれもこれも所見がある場合はどう考えたらいいのでしょうか?

B:それらの所見のうちで、疾病を代表する所見をもって病名にしては? あるいは、もっとも特異的な事態の名で呼んでは?

C:たとえて教えて下さい。

B:昏睡して散瞳して周期性呼吸をしていたら、何をもってこの疾病を代表させますか?

C:昏睡です。

B:貧血で血小板が減って白血球も少し減少して赤芽球も骨髄球も現れていたら?

C:汎血球減少症。

B:そう? 汎血球減少症とLeucoerythroblastosisとどちらが特異的と思う?

C:えーと、Leucoerythroblastosisのほうです。

B:だったら、それがプロブレムです。汎血球減少症より深化してますものね。ついでに胸部写真異常はだめですね。病名と言えないし、しかも異常だけでは何だか分からない。きちんと所見を読影して異常を明確にして、病名にまで到達しないと。腫瘤とか結節とか胸水とか。

C:#1昏睡・#2散瞳・#3周期性呼吸というのは、どうでしょう?

A:#は疾病の名だということを忘れずに考えて下さい。すると分かってきます。

C:でも、全部異常なことだからひとつひとつ考えなければいけないと思うけれど・・・・。

B:あら、また前へもどっちゃったわね。気にしなくていいのよ。私もやっと最近になってすっきりはっきり分かるようになって書けるようになったばかりなの。その番号ってひとつひとつ別々の病気?番号を振ったし名前も違うから別々の病気ってことかしら?

C:・・・。

B:別番号別名称だから、別疾病と宣告してることになるわね。違う?

C:そうですね。

B:ほんとに別々の病気が三種あると思ってる?たとえば、目が悪くて散瞳がずっと前からあったけれど元気そのものだった人が、この一年ほど前から急に肥って夜中に呼吸がおかしいことに奥さんが気づいていたが昨日宴会最中に突然昏睡したとか。それとも一つ?

B:だったら別番号別名称は変ね、#1昏睡だけでないと。#1昏睡・散瞳・周期性呼吸や#1咳・微熱・鼻汁・咽頭痛と同じことになるんじゃない? 目先トラブルを番号を振って並べただけでじゃない?

C:言われて見れば、まったくそうです。

 

プロブレムとアセスセメントの違いは?

C:こういうカルテがあるんですけど・・・。 

プロブレム#1精神症状;アセスメント#1ステロイド多幸症。
同じなんですけど
プロブレム#1胸部狭窄感;アセスメント#1狭心症。

B:それってプロブレムとアセスメントが逆転してるわね。狭心症やステロイド多幸症を#のプロブレムのところに書かないと。狭心症と結論したんだから病名でしょ? そういうカルテを毎日つづけると何が論拠で何が結論かもごちゃごちゃになって考えもまとまらなくなるわよ。すると書いてもしようがないってことになるのよ。#1狭心症と書いて、以後はつづけて狭心症の記事をそのプロブレムの下に書きます。胸部狭窄感は狭心症の症状です。

A:何を書くかはとても大事です。声は消えてしまうけれど、文字はいつまでも自分に突きつけられる。矛盾は統合しない限りいつまでも目の前にぶら下がっています。書く形式は思考の枠組みですからね。雑然とした形式や矛盾した形式では思考も杜撰で矛盾します。そういった思考を容認されてそのまま放置されると杜撰や矛盾に気づく能力も養われない、という恐ろしいことを何かの教育書で読んだ記憶があります。

C:#1単純肥満;アセスメント#1ホルモン異常なら二次性肥満も鑑別。この論理矛盾はすぐ分かりました。だって二次性肥満が否定できないのなら単純肥満と診断できないですから。#1女;アセスメント#1睾丸があれば男を考える。と言うようなものですね。睾丸がないから女と断定してるのに、あるかどうかが未だ分からないとは無茶です。

 

A/Pの大混乱

C:A先生のカルテではAとPがはっきり区別されていましたが、僕が見てきたカルテはほとんどA/Pです。これはどういうことなんでしょうか?

B:A/Pとしてしまうのは方針と実際の行動との区別がないからです。Aで・・だから・・の検査をして・・を投与する、と書くとまたPで・・の検査して・・を投与ともう一度書くことになり、手間省きにA/Pとなるのです。ひとえに区別できてないからです。

C:今の説明では同じことのように思えるのですが。

B:あら、そうでしょうか? カルテの例をあげてください。

C:いくらでもあります。
#1糖尿病;A/P HbA1Cは悪化、もうすこし現行治療を継続し、さらに増悪すればインスリンを導入。
#1鉄欠乏性貧血;A/P 毎年検診で指摘されているが、消化管の内視鏡検査をする;心拡大から心不全が軽度にあるが長年の貧血によると判断;鉄剤内服で治療。
#1上気道炎;A/P もし症状増悪するなら細菌感染の合併を考えて抗生剤を投与。

B:私もこういったカルテをよく見かけます。今は見ると気持ちが悪いです。

A:Aは考察・方針、Pは実際の行為です。全く範疇が異なっているのに、この区別がつかないのはどうしたわけでしょう。別に医学に限らず日常の何事でも区別されるはずのことですのにね。**君も帰国したことだし、久しぶりに親睦飲み会やろう。来月1日午後7時から**屋で会費**円だよ。前文がA、後文がPです。はっきり区別が分かりますね。

B:日常でもAだけでPがないことが結構多いし、意識して区別されてないので決まったのか決まってないのかあやふやのままなんとなく過ぎてます。片方は決まったと思いこんでるし一方は決まってないと信じてる。互いの雰囲気でなんとなく済ませてゆきます。

A:科学の分野が雰囲気の曖昧さで済ませてはまずいのでは? 医学ではなおさらに。

B:先ほどの3例のA/Pには、AばかりでPはありません。言ってみれば、飲み会の理由や希望を言ってますが飲み会の計画が立てられていません。

C:と言うと? もし先生が書くとしたら、どういうふうに書かれますか?

B:
#1糖尿病;
   A HbA1Cは悪化(Dx)。もうすこし現行治療を継続する。さらに増悪すればインスリンを導入(Tx)。(Dx)、(Tx)は書きません。わかりやすくするために言いました。
   P Tx **何錠/日継続。

#1 鉄欠乏性貧血;
   A 毎年検診で指摘。#2をもたらした。
   P Dx 上部消化管内視鏡(*月*日)
     Tx **何錠/日 内服開始。
#2 心不全;
   A 慢性的な#1による心不全。今は無症状。
   P Ex #1の改善で軽快する。1ヶ月ほどは過労を避けた方が無難。

#1 上気道炎;
   A 症状増悪するなら細菌感染の合併を考えて抗生剤を投与。
   P Tx 内服薬無し。

C:わかりました。A先生のカルテと同じですね。方針は分かった、それで何をするの?ということですね。することの行為;何を・誰が・いつ・どこで・どうやって、がないとPじゃないってことですね。

B:全くその通りです。あの人をもっとよく知ろうって言っても、どうやって知るかを言わないと。治そうと掛け声かけても、治し方を言わなきゃね。

A:目標Aは同じでも計画Pが違うこともあれば、同じ計画Pの動機Aが逆ということも日常ざらにあることです。動機はもとのままでも計画を変更する場合もあるでしょう。AとPは別枠で書かなければいけません。昨日はA:○でP:○、今日はA:○でP:●ということもあれば、先回はA:△でP:△、今回はA:▲でP:△の場合もあります。A/P一緒のごちゃごちゃでは思考も行為も明晰ではあり得ません。

 

プロブレムごとに区別しなければいけないか?

C:A先生のカルテはプロブレムごとに#1でSOAP、#2でSOAPと書いてあります。ですが、#1・#2・#3;SOAPとか、S;#1・#2・#3とか、A/P;#1・#2・#3とか、分けて書いてないカルテも見ますが。

A:さきほどの昏睡の事例を思い出してください。プロブレムは患者の病気でしたね。そして別番号別名称は別疾病でした。

C:ええ、ちょっと待って下さい。ええと、するとですね、#1・#2・#3;SOAPとか、S;#1・#2・#3とかは別疾病をまとめて書いていることになりますね。

A:そうです。それでどう思いますか?

C:患者には日々何でも一緒にいっぺんに起こるから、まとめてしか書けないのではないでしょうか? それにバラバラにしてしまうと全体が分からなくなるのでは?

B:そこが大変なとこよ。そんな気がしているでしょうが、気がしているだけですよ。実際はまるで反対です。分けて書かないと全体が分からないんです。

C:ええ? どういうことでしょうか?

B:たしかに一人の患者ですから、同時に様々起こります。昨日はあの病気、今日はこの病気という具合ではありません。ところで、別の病気ならば、その歴史はそれぞれに違うでしょう? 生まれたときからある疾病もあれば昨夜始まった疾病もね。先天性疾病も突発疾病も今は同時に一緒にあります。ちょっと考えてみて下さいね。わかりやすいように言うと、#1に先天性の心臓病があって、#2で突発した発熱性下痢があるとしましょう。
今日診察して、それぞれのSOAPを書けませんか? 書けますね? 心臓の聴診所見や胸部写真所見は#1のところに腹痛や下痢の性状や体温は#2に。区別できるでしょう?

C:はい、できます。書けます。

B:#1・#2を一緒にしてS腹痛・下痢、O体温・聴診・写真を書いて、Aに#1と#2を書くってことは、チグハグしています。もっと複雑な事例やマルチプロブレムの事例では、ほとんどがそうですが、一緒くたに書いては別種の病気が区別できなくてまるで闇ナベです。毒か薬か、何を口に入れているやら、分かりようがありません。発熱も胸痛も腰痛も失神も便秘も黄疸も肺の影も関節の腫れも不整脈も血小板減少も外転神経麻痺も紅斑も、なにもかも一緒くたに書くのですか? これで全体がよく分かりますか? 何が何だか分からないことが分かるだけではないでしょうか?

C:そうですね。

B:もしも、今日あるさまざまな症状や所見が、どの病気によるものかを分かったなら、その#のところにSOAPを書くことができるでしょう?

C:ええ、できると思います。でも分からなかったらできませんし、書こうともしません。

A:おそろしくポイントを突いてきましたね。

C:でもほんとに書けない。

A:つまりね、プロブレムごとにSOAPを書くということは、書けるように分析せよ、ということなのです。例を挙げると#1慢性関節リウマチ・#2慢性尿路感染症・#3胆石症・#4悪性リンパ腫、としましょう。そしてこの数日発熱したとしましょう。この発熱を、はてさてどの#に書くかを、診断するのです。診断できたらその#のところに当然、発熱を書くことができます。そして肝腎なことですが診断しなければいけません。診断しなければ正しく治療できないでしょう? #1の再燃、#2の一過性急性炎症、#3で胆嚢炎の併発、#4の悪化、もしかしたら、別の疾病#5の始まりかもしれません。全く治療が違うから診断しないでどうやって治療するのですか?

C:うーん、プロブレムごとに書くというのは大変なことなのですね。たしかに、書けなければ悪性リンパ腫の化学療法を強化するか、抗生剤を投与するか、皆目見当がつきません。

A:とても大事なところです。書く力がない・書いても仕方がない・書かないことがよいこと、と意味は三様に違います。書けと言われて書く力があるならば、書かない方がよいかどうかを考えることできます。書く・書かないが選択肢の中に並んでありますからね。ところが書く力がなければ書く選択肢が元からないので議論になりません。書けないことを前提にした書き方、つまり書かないことに自動的になってしまうでしょう。

C:患者にはいくつもの病気がありますから、それらを十分に理解していないと書けないのですね。

B:そうよ。患者をよく分かるためには、医学疾患をよく理解していないといけません。専門と言って狭い事柄の特殊知識を集めているだけでは、プロブレムごとに記述できないでしょうね。何かの症状も専門と自称するプロブレムに無理矢理当てはめるか、違うと言って放り出すかのどちらかね。放り出すとなれば、区別せずにまとめて書くより他に方法はないわね。理解もしてないし所見も取れないのでは・・・・。

C:言われることは分かるのですが、最初からそんな風に勉強してませんから・・・・。

B:自信がない?

C:ええ、まあ。それにそんなカルテは他で見たこともないし。ごったまぜに書くくらいでも、何とかなるんじゃないかと・・・・。カルテを見る限り先生達は皆、そんなようなものだから・・・・。

B:何を言ってるの? 実はね、私なんか今振り返ると恥ずかしい。学生時代に、こういうことに関心を持ち疑問を持つなんて自分にはなかった。医局にいたときのカルテなんか他人には見せられない。でもね、こういうカルテを書けるように勉めないと結局何も分からず仕舞いになることがよく分かりました。患者を診て担当して、こうやってカルテに書こうとするとどうしたって勉強せざるを得ないし、所見も正しく取れるように訓練せざるを得ないし、写真もきちんと読影しないといけないし、つまり勉強の方向と方法がはっきりつかめたました。今思うと、本当の意味での勉強なんか全くしてなかった。本当の勉強を知らなかった。

C:そうなんですか?

B:今未だ学生でしょ? これからよ。

C:そうかあ。できるかなあ。

A:患者の医学的構造をただしく構築することが基本です。そのためにこそ、プロブレムリストを作成しプロブレムごとに区別記述します。それができなければ真っ当とは言えません。と、一人前な事を言ってみましたがじつは僕も始めはよくできませんでした。でも、僕は医学以外の脇道をしていた時にその脇道の高いレベルの本物を見ていましたから、このカルテを見たときすぐに本物だとピンときました。だから脇目もふらずにこのカルテが書けるように勉めました。

C:分かりました。今日はほんとにいろいろ教えていただきました。すっきりしました。あとはやってみるだけですね。

A:人がかわって違う話し方の説明を聞いて貰ってもいいのではないかと、B先生にでかけてきていただきました。

B:人に説明していると自分でもまた整理できます。医局時代の自分に言い聞かせているようでした。

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