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研修医の勉強 - 覚えることが多すぎる!


出席者
A: 昭和62年神戸大学卒(司会)
B: 昭和55年名古屋大学卒
C: 平成1年岐阜大学卒
D: 昭和56年東京女子医大卒
E: 昭和55年岐阜大学卒

A:今日もわざわざ集まっていただきました。若い人たちを指導されて、日頃お考 えのことを率直にお話し願えませんか? 1,2年目の研修医をご覧になって、かれらが気づかずにいる落とし穴があるでしょうか?

B:国家試験知識はまたたくまに忘れるようですね。国立大学の講義でも大要不在で末端知識の展覧会のようなものですし、国家試験も改善されたといえ記憶を問われていますから、無理もないでしょうが。

C:忘れてもいいですよ。所詮詰め込み知識は役に立たない。

B:覚えることがありすぎて覚えきれないと思ったまま卒業してきますね。

A:そんなに覚えなければいけないのでしょうか?

E:覚えることはさほど多くはありません。基本概念を教えられていないことが問題です。4年間もあるのです。解剖・生理・細菌・病理などの基本知識を覚えるのに十分です。やたらに細かな解剖学の知識は覚えようとしても覚えきれません。細かなことはあとになって必要となったときにひとりでに身につきます。それより基本概念を理解することのほうが大事です。

A:基本概念とはどういうことを指していますか?

E:臨床の問題として例をあげますが、「梗塞とは何か」をたずねたとします。壊死・梗塞・壊疽を区別して理解していなければなりませんが、区別を言わせるとあやふやになります。何となく分かっているようで実は分かっていないのです。それでいて心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞と診断します。イレウスについても同じ。「イレウスとは何か?」にたいして、麻痺性・閉塞性などとイレウスのタイプや種類を言い始めては失格です。「心不全とは?」「腎不全とは?」、皆おなじです。自分がいま述べたことは心不全の症状や原因であって、心不全が何物かではないことに気づかないといけません。それでは基本概念を身につけているとは言えません。

D:まさにそのとおりで、自分も卒業したては分かっていませんでした。分かっていないことにも気づかなかった。教えられて分かるようになったので、分かっていない研修医はすぐに見分けられます。

A:知識がなくてもハンデイにならないのですね。だいぶん安心する研修医もいるのじゃないでしょうか。とはいっても基本概念も理解してなくて大丈夫ですか?

B:頼りは学力です。本の記述を覚えただけでは現実の最中で知識を使えない、と気づく時期がすぐやってきます。そのときが基本概念を理解する絶好期です。分かっていない自分に不安も感じないひとは見込みがありません。

A:勉強はどうしたらよいでしょうか? これまでは覚えることばかりしてきたの です。

B:学生のうちは実際経験がないので知識がばらばらです。まとまりがありません。解剖・生理・病理などを総和しながら疾患を学びません。つまり、覚えるだけということですが。

C:理解しながら勉強しては国家試験に落ちるかも知れない、と思うのです。自分の経験からいっても、その場限りの間に合わせでした。

A:国家試験は試験でいまさら仕方がないから、これから独学でなんとか力を身につけることはできないでしょうか?

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